医療DXの現状と課題:現場の声から見えるリアルな課題

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政府主導で進められている「医療DX」。電子処方箋やマイナ保険証の導入など、医療のデジタル化を推進する動きがある一方で、実際の医療現場ではどの程度進んでいるのでしょうか?医師の意見をもとに、医療DXの現状と課題について考えてみます。

医療DXの進捗状況:現場の実感

医療DXに関して「十分進んでいる」と感じている医師は少なく、多くの医師が「まだまだ進んでいない」と感じているのが現状です。
一部の医療機関では、電子カルテの活用やスマートフォンを使ったデータ参照、オンライン会議システムの導入などの取り組みが進んでいます。しかし、こうした先進的な取り組みが一部の施設にとどまっているのも事実です。

また、医療DXの導入に伴うコストや運用負担に対する懸念も大きく、国主導の施策でありながら医療機関側に多くの負担がのしかかっているという不満の声が上がっています。

医療DXで医師が直面する課題

医師にとって、電子カルテや電子処方箋の導入は必須の流れとなりつつありますが、それに伴う運用負担が大きな課題となっています。

コスト負担の問題

医療DXは政府主導の取り組みですが、その導入・運用コストを医療機関が負担する割合が多く、「なぜ医療機関がコストを負担しなければならないのか?」という疑問の声がかなり多いです。特に新規開業する医師が負担するコストは莫大です。

電子カルテの管理が煩雑

電子カルテのバックアップのために紙での保存を求められることもあり、デジタル化による効率化が期待される一方で、むしろ手間が増えているケースも見られます。

電子処方箋の導入負担

電子処方箋を利用するには、医師資格を証明するカード(HPKIカード)を取得する必要がありますが、煩雑な手続きや費用がネックとなり、導入に消極的な医師も少なくありません。HPKIカードは、申請費用はもちろん、運用費と更新費(5年毎)もかかります。

事務作業が減らない?

「医療DXが進んでも、仕事が減っている実感がない」という意見が目立ちます。

デジタル化しても紙がなくならない

電子カルテの導入が進んでいるものの、デジタルデータを紙に印刷し、受け取った施設が再度スキャンして電子カルテに保存するなど、無駄な手間が依然として発生しています。

医療DXで負担が増える現実

デジタル化による効率化を期待する声もある一方で、電子処方箋の運用による手間や、新しいシステムへの適応の負担が増えたという意見もあります。

医療DXが職員削減につながらない

医療DXの導入によって事務職員の負担が減るはずが、操作の煩雑さなどのせいでむしろ事務作業が増え、現場の負担が軽減されていないと感じる勤務医も少なくありません。

本当に効果がある医療DXとは?

現場の声を総合すると、「医療DXは導入しても負担が増えるだけでは意味がない」という意見が多く見られます。本当に現場で活用されるDXのためには、以下のようなポイントが重要です。

  • ランニングコストの負担軽減
    医療機関が負担する運用コストを国がどこまで補助できるかが、DX推進のカギとなります。

  • 紙ベースの業務削減
    デジタル化を進めるなら、紙の書類を完全になくすくらいの思い切った改革が必要でしょう。

まとめ

医療DXは、医療の質を向上させ、業務効率を改善する大きな可能性を秘めています。しかし、現場の医師たちの声からは、「導入負担が大きい」「管理が煩雑」「コスト負担」「業務効率の向上が実感できない」といった課題が浮き彫りになっており、多くの医師は導入を見送っています。

今後の医療DX推進においては、単なるシステム導入ではなく、医療従事者が本当に使いやすく、業務の負担を軽減できる形で進められることが求められます。